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半農生活

頂き物×葬儀社

森田 真理

-頂き物-

昔から自給自足に憧れはあって、家庭菜園をしていたこともあったけれど、結局いまは野菜は何も作ってない。田舎では大抵の人が野菜も米も作っている。ありがたいことに旬の物はもらえちゃうから、作ってなくても食卓は豊かやわ。春はタケノコ、夏野菜、秋はマツタケ、冬はダイコン、ハクサイなどなど。私の家の裏で畑をやっている農家のおいちゃんがいて、特に野菜をよくくれる。軽トラいっぱいのネギとレタスが家の前に置かれていた時には、その量に驚いたわ。家の前に野菜が置かれていたら、我が家では「笠地蔵が来たね〜」って言うんだよ(笑)。別の人からはサツマイモやカボチャ、キュウリにイモ、ニンニクなどを取りにおいでと連絡をもらう。もちろん、もらえる物はありがたくもらいに行くよ。変わった物でいったら、マムシ酒とか、クマクリーム、シシクリームとかももらったことがある。シシクリームは肌のかぶれに効くんだって。話は戻るけど、野菜は都会からのお客さんにはそのまま出すだけでも喜ばれる。新鮮だし、美味しい。大量にもらうから、保存して大切に食べきろうという気持ちが沸く。おかげで料理の幅が広がったと思うな。ストレス発散はもっぱら保存食づくりだね。うちのおばあの教えに「食べ物は四里四方の物を食え」というのがあった。四里っていったら12キロ。だいたい大屋町内だね。足りない野菜は道の駅や近所の商店で買ったりしている。出所がわかって安心やで。

 

-葬儀社-

西村交益社に勤めています。葬儀社の仕事をざっくり話すと……。お葬儀の電話依頼がきたら、故人様を迎えに行き、方々への手続きをして式の段取りを進めます。納棺をし、お通夜、お葬儀をして、その後、初七日や四十九日の法要、長い人では十三回忌まで、親族の方と相談しながら進めていく仕事です。昔はどこも家での葬儀が当たり前だった。それが10年くらい前から葬儀社のホールを使う会館葬が増えてきたと思う。うちの会社も昔は家での葬儀の手伝いが主だったけれど、「家ではお葬式ができれへん」という方の声を聞き、葬儀会館を作って会館葬を始めたんです(じつは市内初!)。今ではそっちが主流になってる。家でお葬式をしていた頃は、どこの地域にも式の段取りを教えてくれる長老がいたり、代々伝わる「お葬儀ノート」なんていうものもあった。それが、会館葬が増えた今では、「お葬式のやり方がわかれへん」「誰に聞いたらええかわかれへん」という相談をたくさん受けるようになった。家での葬儀でも、会館葬でも、葬儀社は葬儀についてのよろず相談所になってるなと思う。お葬儀は予定が立たないうえに、やり直しがきかない。いつも心に留めていることは、思い込みや先入観を持たないこと。金額の多寡で人の「死」を区別しない、「死」に慣れないということです。送り方は人それぞれだけど、その人たちのためのお葬儀を全力でサポートしたい。お葬儀は亡くなった人のものでもあり、残された人のもあります。ハプニングなく、式を粛々と進めることが努めだと思っています。

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