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なんだか山の中が騒がしい!

まいそう祭り

大屋町宮本区

 養父に火を使った珍しい祭りがあると聞いて行きたくなった。大屋町宮本区御井神社で毎年1月14日に行なわれている「まいそう祭り」だ。

 祭りは午後7時から。山の上にある神社の境内に行くと、すでにわらわらと人が集まっていた。お祭りの開始を示す神事が終わると、参加者みんなに松明が配られた。この燃え盛る松明で鬼が右手に持つ木箱を叩くというのだ。松明を持った参加者で大きな円陣を作ると、円の中に鬼が飛び出して来て、円に沿ってぐるぐると歩き始めた。地区の人が「まーいっそんじぇ」という大きなかけ声をかけると、鬼叩きが始まった。

 「まーいっそんじぇ」というかけ声は「もう一艘ない」の大屋弁らしい。祭りの名前の由来は神話の世界まで遡る。昔、この辺りは泥海で、そこを神々が3艘の舟で見回りをしていた。途中、2艘の行方がわからなくなり、結果、一艘がここ宮本で見つかった。だが、もう一艘がない。「もう一艘ない」と叫びながら舟を探したことから生まれたのがこのお祭り。以来、鬼を松明で叩くことで、無病息災や五穀豊穣を祈るお祭りとして宮本で受け継がれてきたという。鬼は全部で3体。それぞれ円陣に沿って3周すると祭りは終わる。このまいそう祭り、遥か昔に始まってから、1度も休むことなく行なわれてきたらしい。何があってもできるよう、区民みんなでぬかりなく準備をする。松明は、燃えやすくするために、なんと1年前に薪割りをして、じっくり乾燥させるそうだ。

 じつは、御井神社ではまいそう祭り以外にも年に3回もお祭りがある。餅まきのために臼と杵で餅をついたり、餅をまく櫓をその日のためだけに組んだり、萩を盛大に燃やす萩立て祭りのために山や畑から萩を集めてきたり。これらの準備も区民で集まってするのだ。

 現在の区長・中尾勝さんは、よそから宮本に来た人だ。最初は、お祭りが年に4回もあることや、その度に神主さんを呼んで神事をすることに驚いたという。だが、20年経った今となってはそれが当たり前。

「毎年欠かさず祭りをしていたら、お宮が区民を守ってくれている、区民でお宮を守ろうという気持ちになる。宮本の人は子どもの頃からそういう気持ちが培われる。村の人たちに祭りを残そうという自覚がある。当番は大変だけど、簡素にしようとは全然思いませんよ」と、中尾さんは話してくれた。

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